四半的弓道の将来
 
 
 
2003.11.10記
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■四半的観戦記
2003年11月9日(日)、府中市教育委員会主催により、府中市総合体育館第2体育室において、「第14回府中市四半的弓道競技大会」が開催された。同大会を私とゼミ学生3名で視察し、ビデオ撮影・写真撮影・取材をさせていただいた。
同大会は府中市の四半的大会であるが、今年は九州から、飫肥四半的保存会・宮崎県四半的弓道連盟・熊本県四半的弓道連盟の会員ら40名を越える特別参加があり、熱戦が繰り広げられた。会場の一角には四半的体験コーナーもあり、私たちも体験させていただいた。地元ケーブルテレビも大会と交流の様子を取材しており、われわれの取材や体験にもカメラが向けられた。われわれにも取材依頼があり、TKD君に代表してもらい、大会を見た感想を述べてもらった。
 
四半的はその発祥の地、九州では盛んに行われているが、他の地域への四半的普及はまだまだ進んでいない。その中でも府中市は関東では四半的弓道が盛んに行われている地域で、今後関東方面への普及で中心的な役割を担ってゆくであろう。秋のこの大会と春にも大会を開いている。近隣の国立市や埼玉県でも愛好者がいると聞く。また新潟県においても愛好会があり、今回は参加していないが、普及活動をしていると聞く。大学における体育・スポーツ教材としては、筑波大学・山形大学・国際武道大学が四半的弓道を授業内で扱っている。未確認であるが、ある大学では同好会?ができているという噂を聞いているが、確認がとれていない。大学の部・同好会などで実施しているという情報があれば是非教えていただきたい。
 
 
競技は1チーム5人×30射で団体戦が行われ、個人も団体で実施した30射の的中で競われる。的中制で競われる。競技は10射3回を午前中に終了しお昼休憩となった。午後は個人の決勝が行われる予定。団体は競射も予定されていたが、競射なしで順位が決定した。的中のよい選手は30射全てを的中させていて、皆中者も続出していた。個人で30中を出すと、「優」マークのシールがもらえるそうで、それを弓に張るそうである。上の切り詰め籐から、ずらっと十数枚のシールが並んでいる人もある。団体戦の優勝チームは150射148中、2位147中、3位146中とそれぞれ1本の差が順位を決定した。的中ハイレベル、「恐るべしミニ弓道!」侮るなかれ! 同中になった場合には、的を小さくして各自1本の競射を行うようである。個人も的が小さくなり、射詰方式で行われるようである。全大会かどうかは知らないが、本大会では的中により、30本の部、29・28本の部、27・26本の部、25〜23本の部、22本以下の部に分けて、それぞれ1位〜3位までの表彰がある。また新人戦(今回は2名のみ)もあり、順位表彰される。この順位の決定は親睦的な意味であろうか。競技の観点からはやや納得がゆかない。
 
競技の概要:距離820cm、巻藁の下部に直径13.5cmの的を設置する。巻藁の後には防矢のためウレタンマットのようなものが置かれている。射位にあたる位置にマットが敷かれていた。競技の基本は正座で行うが、座布団や枕状の腰掛け、小さな椅子などを持参している選手もあった。団体5人各自30射計150射。各自10射ごとで3セット行う。矢は各自1本持参し、5人が発射してから的中を確認して矢返しを行う。審判は他のチームが交代しながら行っている。
 
 
使用弓具は弓はカーボンか、グラスファイバーかわからないが新素材の弓が多いが竹弓も使用される。矢はカーボン、ジュラルミン、竹などがある。弓には印をつけることも可能で、マジックでの印や籐の隙間をあけて狙いに利用している。弓の握りも各自サイズを工夫しているが、かなり太くしている人が多い。発射後、弓返りはさせない。弓道でいう打ち切り方式である。・・というか、弓返りはしないのである。弓の強さに比べ、あれだけ長く重い矢を発射すれば、エネルギーを矢にとられ、弓返りが発生するほどのエネルギーは残らないものと考えられる。ちなみに弓の強さは3.5kg〜6.0kg程度であろう。「強さの制限はないのですか?」と尋ねたところ、「右手でつまむ方式の取りかけなので、強すぎると保持できなくなります。」とのこと。
 
 
 
矢はかなり長いが、羽根は弓道と大差はない。筈は保持しやすいように、皮や糸が巻かれている。糸を巻いている人が多いようだ。滑り防止である。また、その滑り防止に、筆粉のようなものを使用している。ある人はイカ粉を使い、炭酸マグネシウムなど各自の工夫があるようだ。ゆがけは使用せず、素手であるが、中には、人差し指のみ革をはめる、親指のみ革をはめる、2指とも革をはめる人もいるらしい。各自が自分の射術と相談しながら工夫しているようである。弓手にゴルフの手袋のようなものを使用する人もいた。自分なりの工夫を凝らしているようだ。一方、弓道家の立場から見ると道具に無頓着に思えることもあった。弓を上下反対に立てかけている人もいた。
そして、弓道界と同じ風景も目にした。「あーっ!」と誰かが叫ぶと同時に、体育館の壁に立てかけられた弓と矢が共倒れをおこした。記憶のある懐かしき風景。(^^)
 
お昼休憩となり、なんとお弁当をいただいてしまった。色々と親切に教えていただいた上、遠慮もせずにご馳走になるとは・・・。ゼミ学生の前で、教育的配慮・態度をとるべきが・・・、腹がへってはしかたがない・・・、生きるべき本能のままに・・・、手、手が・・動く・・。な、な、なんと、お茶まで・・・、かたじけないっ。
おいしくいただきました。大会関係者の皆さん本当にご親切にありがとうございました。・・、や、や、・・まだ、終わりません・・。
 
お昼をすませ、休憩中に大道芸をやって世界を旅している方が、パフォーマンスを披露されました。木琴のような、自作のものや、足でペダルを踏んで叩くドラム?、鐘?など、見たことのない工夫された楽器で音楽を披露されました。CDも出されているとのこと。お話も面白く、ためにもなり、感心して聞いておりました。お名前は忘れてしまいましたが、その方、四半的もやられていたとのこと。30中もたびたび出される名人のようでした。音楽を聴いて、あるいは見ても、器用そうな方なので納得します。写真家でもあるそうで、感性の豊かな人なのでしょうね。楽しいお昼休みでした。
 
もう少し、お昼の時間があったので、府中市総合体育館内にある弓道場を見に行きました。月例射会を行っていらっしゃいました。都会の道場って感じですね(わっ!、田舎もんの発言じゃ)。入り口付近で、「国際武道大の方?」と品のよさそうな年輩の方が・・・、「息子が武道大の出身です。」・・・、なんと武大弓道部OBのお父様でした。本当に楽しいお昼休みでした。
 
学生達は、朝から早速体験コーナーへ足を運んでいたのであるが、私はまだだったので、午後、個人決勝の最中、体験コーナーで楽しませていただいた。「竹の矢の方が中る」とおっしゃっていた方がいる。なぜ?、振動の収束が竹の方が早いのか? む、む、研究の余地があるぞ。ゼミ学生の誰か卒業研究の課題にしてほしいものだ。長い竹の矢はかなりたわむ。箆張りが強すぎるとだめなのだろうか? 息を詰めてジーッと狙わないとたわんだ箆の揺れが収まらぬ。やはり集中力が必要! これ30射詰めるのはたいへんだ。簡単に発射体験ができるが、奥も深いぞ! 伸び合いの気分は弓道と共通するが、技術的な部分や狙いの考え方などはむしろアーチェリーに近いかも知れない。このあいだ、体験したアーチェーリーの感覚に近いものがある。狙い、弦の狙いへの利用、2枚頬摺り、クリアランスの重要性、取りかけ・・・もちろん同じではないが、弓道かアーチェリーかというと、若干アーチェリーに近いのかもしれない。
 
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普及する?
四半的弓道競技大会参加者を見ると、概ね年輩の方が多い。若者はかなり少ない。ゲートボールよりは平均年齢は若そうだ。普及してゆく上で、どのようなことが必要だろうか? 九州の保存会では、四半的は焼酎とセットらしい。焼酎の銘柄にも「四半的」というのもある。お酒を飲みながら四半的を楽しむというのはその地域のあるいは発祥からも1つの文化としてはよいが、スポーツとして普及を考えると障害となろう。今回の参加者の中にもお酒臭い方もいらっしゃったようだが、きちんとしたスポーツとしての競技規定を定め(定められていると思うが)、公式戦競技としての参加意識を持つ必要があろう。いずれ、どちらの方向に進むのか、選択を迫られる時期が来るであろう。また、リアルタイムでの的中表示など、競技の運営方法を検討してゆくことによって、白熱した試合展開を演出でき、競技者にも見る者にとっても面白くすることを考える余地が残されているような気がする。
生涯スポーツとして注目されるための施策を準備する必要がある。PRの方法を考えなくてはならない。若年層に受け入れられるためには、アクティブでエキサイティングな部分がなければならない。教育的効果についても考慮されなければならない。指導者(技術指導のみでなく、新たな会の組織運営をも指導できる者)の養成が必要である。指導者養成講習会(やっているかどうか知らないが)を、まだ人口が少ない、今から行ってゆくことが将来に役立つであろう。
方法によっては、生涯スポーツ・社会体育・地域スポーツ・年少者の武道スポーツ教育、世代を越えた交流活動などの観点からも四半的は注目をされる存在になりうるものと考えている。
 
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