日枝神社御神的 神事
 
 
 
 
 
 日枝神社(三芳村増間552番地)は千葉県安房郡三芳村にある。そこでは毎年3月1日(以前は8月に行われていたとのこと)午後(2時頃)、弓射で稲作などの豊凶を占う歩射(ぶしゃ)の神事が行われている。御神的(おまと)神事と称している。歩射は足を地面につけて弓を射る方法をいう。
 2001年3月1日、あいにくの雨天であったが、神事は行われるということで、見学し、その様子を撮影したビデオを弓道研究室で保管することにした。雨天のため鳥居の上には青い雨よけのシートが張られていた。雨天でもあり、観光客らしき人はあまり多くなく、ほとんどは地元の関係者と地元の見学者のようであった。また当日は千葉テレビや千葉県文化財保護に係わる県の職員らしき人たちも取材に訪れていた。千葉県では指定の伝統行事など何年かに1度再調査を行っているようであり、今年が再調査の年であったようである。前回の調査(何時か不明であるが)の時とあまり変わらず行われているとのことであった。他の地域の伝統行事の中には大きく変わってしまったものもあるらしい。本神事は千葉県指定民俗資料となっている。
 ここで行われる弓射は、1300年前から伝わるといわれる神事だそうである。天正天皇の頃(715〜723)を起源とするという。2月26日の的張りから始まり、当日、地区から選ばれた若者2人は鍵元と呼ばれる氏子総代の家に赴いて、新湯を浴び、垢離(ごり)の淵で水浴して紋付・羽織・袴を整える。食事を済ませ鍵元に伴われ、弓矢をたずさえて神社に上る。神前にて午後1時頃より祭典が始まり、それを終えたら、的の用意がされ、御的神事が始まる。射手2名は赤い鳥居の下から的に向かい、1手づつ交互に36本の矢を射放つ。当たった本数や個所により、天候・適種・豊凶などを占う神事である。
 鳥居の下には稲藁が敷かれ、そこが所定の射場所である。矢屏風のような矢立に12本の白羽の矢が準備され、お払いを受けた後、射手は2本の矢をたばさみ、一礼した後、着物の左袖を脱ぎ、おもむろに足を踏み開き、1本射る。足を開いたまま、2の矢をつがえ射る。足を閉じ、左袖を直し、一礼して次の射手と交替する。12本ごとに矢取りが行われる。12本を3度に射るが、これは早稲・中稲・晩稲を意味する。
 使用される弓は黒塗りの弓2張で、1張には銘があったが名前は確認できなかった。弓の上部には(弦の部分か?)神社で見かける白い和紙(専門用語を知らないが)がつけられていた。
 矢は白箆・白羽・板付で新しい作りであったので新調したか、近年のものであろう。矢屏風の形状の矢立も新しい物のように見受けられた。
 的は黒で3輪が描かれた大きな的(直径1.8m)の、かなり高い位置に掲げられている。的までの距離は23間半(約43m)という。的の後方は車1台が通過できる位であるが舗装された細い道があり、民家もある。特に通行止めになっているわけではなく、田舎道でもあり、行事の最中に通行人はいなかったようであるが、たいへん危険な感じを受けた。実際に外れ矢が道の向こうのがけや溝まで飛んでいっている。
 36本射終わって、射手は控え所に退き、的もただちに控え所に片付けられた。控え所では的中や矢所などを集計して、その結果をガリ版印刷していた。ガリ版印刷機を20数年ぶりに見た気がする。集計結果まではうかがってこなかったので今年の天候・豊凶は不明。
 
 
行事に関する問い合わせ先:
 三芳村振興課 0470−36−2114
 
 
 
 
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